リテールビデオレンタルチェーンの生き残り戦略

Netflixはじめ、新しい形態のビデオレンタルに押されて業績を悪化させ続けているのが既存のリテールのビデオレンタルチェーン店。これまでもいくつかエントリーを書いてきたが、最大手のBlockbuster、2番手のMovie Galleryが、最近ダウンロードにも目を向けている。

まずはBlockbuster。ちょっと前にダウンロードサービスとしては老舗のMovielinkの買収交渉をしていると報じられた。値段は$50 million。以前は$80 millionで話がされていたらしいのだが、Appleの映画ダウンロード参入によって価値が落ちてきたらしい。NPDによると、ダウンロードにおける現在のMovielinkのシェアはわずかに3%しかない。

昨年7月のエントリーで、MovielinkとCinemaNowは3年以内になくなると予測したが、どうもMovielinkはBlockbusterのサービスとして取り込まれる方向になってきた。

ところで、BlockbusterにとってMovielinkの買収はメリットがあるのだろうか?
おそらくMovielink単体で存続していたときよりは価値は上がるだろう。Blockbusterの膨大な顧客ベースに対して、店舗ベース、Total Accessのオンラインベースのオファーとの組み合わせの中で、一つのレンタルの形態としてのダウンロードをオファーできるのであれば、利用者は増えるかもしれない。

ライバルのNetflixが先般開始したサービスは、インターネットにつながっていないといけないというデメリットがある。Movielinkのサービスのいいところは、ダウンロードしてしまえばあとはオフラインで視聴できるところにあるので、ビジネストラベラーなどには便利なサービスではあるが、カギとなるのはサービスプランの形態だろう。Netflixのストリーミングサービスは、既存の郵便ベースのサービスに対して追加料金を取っていない。現行のMovielinkのサービス同様ダウンロードごとに$3-$4という形態よりも、Total Accessの定額料金のプランの中で何本ダウンロードも可能といったような形態にするべきだろう。

次に2番手のMovie Gallery。こちらは昨日MovieBeamを買収したと発表した。
昨年2月のMovieBeamに関するエントリーで、これも長続きしないだろうと予測したが、こちらもMovie Galleryに取り込まれた形になった。買収金額は公表されていないが、Movie Galleryは買収とサービス開発にかかる予算は今年度中で$10 million以下と言っているので、買収金額そのものも$10 million以下であることは間違いなさそうだ。この新サービスが始まったときには、CiscoIntelなどの大手から$50 million以上の出資を集めていたのだが、この投資は全く回収できなかったということになる。

しかしこのMovie GalleryによるMovieBeamの買収は、まったくもって理解に苦しむ。$10 million以下という安い値段での買収ではあるが、このサービスのネックは以前にも指摘した通り新しくセットトップボックスを設置する必要があること。リテールでこのセットトップボックスを売るというのがうまくいかなかったことは既に実証済みであるから、Movie Galleryのとりうる戦略としては、ケーブル会社のようなセットトップボックスのリース形態くらいか。

実店舗ベースで持つ顧客ベースに対して、このMovieBeamのセットトップボックスをリースすることで、店舗に足を運ばなくてもある程度のタイトルは見れるようになりますよ、というサービスはあり得る。しかしこれはMovie Galleryがセットトップボックスの負担をすることになるので、経営上はかなりのリスクをとることになる。

しかも、MovieBeamのサービスは電波を借り上げてデータ配信をしているので、サービスを継続している限りは、加入者が増える増えないに関わらずかなりの固定費がかかってくるはず。これを回収するためにはある程度の加入者を獲得しなければならない。昨年2月にMovieBeamの新サービスが発表されたときには、50万加入者を獲得してやっと収支トントンという話だったから、Movie Galleryもこれと同程度の加入者を集める必要があるということになるが、買収金額含めた$10 millionの予算では、とてもそこまで加入者を獲得できるとは思えない。

ということで、MovieBeamについては前回の予測を継続し、買収されてもすぐになくなるだろう、ということにしておく。