シリコンバレー、ハリウッド、そしてコンテンツの消費者

いよいよ2006年。まだ始めて数週間しか経っていませんが、今年もブログがんばって続けていきたいと思いますので、よろしくお付き合いください。

さて、このブログの大きなテーマの一つは、変化を続けるアメリカの市場環境の中で、いかにエンターテインメントコンテンツの消費形態が変わっていくのか、というもの。上流はコンテンツプロデューサーから、下流は末端の消費者までのダイナミクスをインフラ、メディア、テクノロジー、そしてそれらに関わる会社の株の変化をウォッチしながら考えていこうというものである。

今日はこのテーマを考えるにあたって、やや長文だが読み応えのある記事をいくつか紹介ようと思う。今回はそれぞれの記事の分析、各論には立ち入らないが、2006年最初のブログということで、これから一年間考えていく上でのベースとしたい。

ひとつ目は、梅田望夫さんのブログ
■[英語で読むITトレンド] カリフォルニアの「北」(シリコンバレー)と「南」(ハリウッド)
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20051225/p2

そしてここで言及されているSan Jose Mercuryの記事
Silicon Valley, Hollywood have chance to reinvent entertainment industry
http://www.siliconvalley.com/mld/siliconvalley/13442838.htm

ここで言われているのは、テクノロジーの拠点であるシリコンバレーと、コンテンツの拠点であるハリウッドとの間でのカルチャーの違いの話。コンテンツがデジタル化していく流れの中で、最近最もホットな話題の一つである。これに関わるカンファレンスやセミナーはしょっちゅう開かれていて、私自身もいくつか参加したことがある。Google、Yahooなどのシリコンバレー企業の幹部と、ハリウッドのスタジオの幹部が同じパネルで交わす議論を聞いていると実に興味深い。

基本的な構図としては、新しいテクノロジーによってコンテンツの流通形態を変えていこうというシリコンバレー対、旧来のコンテンツビジネスを破壊されたくないハリウッド、という形。

この構図の中でシリコンバレーとハリウッドどちらが主導権を握るのかということについて、興味深いレポートをi2 Partnersというコンサルティング会社が最近出した。
War of the Worlds: Hollywood Opts Out of the 'Google Economy'
http://www.i2partners.com/ideas/war-of-the-worlds-hollywood-opts-out-of-the-google-economy

このレポートでは、ブロードバンドでの映像配信はハリウッドにとってこれまでのビジネスモデルを破壊するものでしかなく、ブロードバンドメディアへのシフトはハリウッドが主導権を握る、とはっきりと断じている。

一方、シリコンバレーとハリウッドの戦いというよりも、今起こりつつあることを客観的に分析しているのがFast Companyの12月号の記事
Building a Better Movie Business
http://www.fastcompany.com/subscr/101/open_hollywood-better-business.html

こちらは"no one will be in control--except, in a way, all of us will be"という言い方で、消費者が力を持つことになるという見方。

いずれにしても向こう数年間はシリコンバレー、ハリウッド、また消費者にとってもいろいろな変化が起こっていくことは間違いない。iPodへのビデオ配信をはじめ、携帯電話へのビデオ配信、ケーブル会社によるビデオ・オン・デマンド、既に10%以上の世帯へ普及したDVR、今年から徐々に立ち上がるであろう次世代のDVDなど、新しいコンテンツ流通形態がいろいろ試されていくなかで、ビジネスとして何が成功するのか、何が失敗するのか、今年一年かけて自分なりの分析をしていこうと思っている。