アメリカのビデオ配信のエコシステム

CNET Japan森祐治さんのコラムに、最近のこのブログの話題に通じる話があった。

日米で異なる映像配信ビジネスモデルの行方
http://japan.cnet.com/column/mori/story/0,2000050579,20094386,00.htm

日本の方にはこの森さんの見方の方が自然な感覚なのかもしれない。前回のエントリーで書いた、テレビ番組に$1.99払うかというアメリカ人の調査で、17%もの人が払うと答えたことの方が驚きなのかもしれない。

なぜ日本が広告ビジネスモデルであるのに対し、アメリカは有料配信なのか?
日本のGyaoがどのような広告を入れてやっているのかはわからない(アメリカからはアクセスできない)のだが、アメリカで広告モデルをやらない理由の一つは、複雑なアメリカのネットワークテレビ局のシステムにある。

ネットワーク局が持つ番組にはまず2種類ある。系列のスタジオで製作されたものと、そうでないもの。さらにそれを配給する先のローカル局にも、ネットワークが所有する局と、系列局があり、さらにそれを再配信するケーブル・衛星放送という具合だ。

また人気番組の再放送ということになると、今度はシンジケーションというシステムがあり、ネットワーク局を離れてケーブル専門チャンネルなどでも放送されるようになる。

さらに最近はテレビ番組のシリーズをパッケージのDVDとしても売り出している。

こうしたシステムの下ではコマーシャルの扱いも含めて、誰がどのように利益を得る仕組みになっているのかというのが複雑で、インターネットでの配信を含め、オンデマンドというこれまでになかった形態をどのような形で組み込むことができるのか、その全体の枠組みの中でどうすればネットワークが最大の利益を得られるのかというのを模索中、というのが現状だと思う。

最近アナウンスされたVODの詳細をいくつか調べてみると、それが見て取れる。

CBSの例を見てみる。

看板番組であるCSI、Survivorがオンデマンドで見られるのが、インターネットのGoogle Video Store、それにケーブルのComcast。ところがインターネットとケーブルでは値段が違う。インターネットは$1.99に対し、ケーブルは$.99。インターネットはCMが付かないのに対し、ケーブルは放送されたままのCMが付いてくる。これはケーブルでの配信による既存のやり方の延長として、タイムシフトの分に$.99という値段をつけた格好。インターネットによる配信のような全く新しいメディアでは、CMを挿入するに当たっての利害関係の調整が難しくなるのに対し、このやり方であればそれほど気にしなくていいわけだ。

また、ケーブルの方は地域限定となっている。意図的にCBSが系列局のある地域を避け、所有する局がある地域だけでオファーすることになっている。インターネットという地域に限定されないメディアと、ローカル局という地域固有のメディアでビジネス形態が違うために、利害の衝突を避けた格好になっている。

NBCDirecTVの例はまた別だ。
衛星は全米をカバーするために、どちらかというとインターネットに近い扱いになるのか、こちらはCMなし。ただし番組の方はNBCの系列を離れてシンジケーションされる番組はオファーされていない。

こうした新しい試みが、どのように消費者に受け止められるのか、またこれまでの配信エコシステムの中にオンデマンドがいかに取り込まれていくのか、あるいは破壊することになるのか、まだしばらくトライアンドエラーが続きそうだ。