TiVoの勝訴は本当に薔薇色か?

3月9日のエントリーで触れたTiVoの訴訟に対する判決がきのう出た。結果はTiVoの勝訴。EchoStarに7,400万ドルの支払いが命じられた。

これを受けてきのうの時間外取引でTiVo株は20%急騰した。

実は数日前に、TiVo株は別の理由で7%以上急騰している。この時のニュースは、DirecTVがTiVoとのサービス契約を3年間延長したというもの。DirecTVはもともとTiVoから、親会社であるNews Copr.傘下のNDSのDVRに切り替えることを決めていたのだが、この新しいDVRへの移行がうまくいっていないようで、TiVoとの契約延長の必要に迫られたらしい。

さて、そんな経緯で年初以来ほぼ倍近くにまで上がってしまったTiVo株であるが、本当にこの会社の未来は明るいのか?

EchoStarに対する勝訴は当然のことながらGood News。しかし7,400万ドルの賠償金そのものは、TiVoの創業以来の赤字額の累計6億5千万ドルに比べれば大きな金額ではない。(ただしEchoStarがTiVoの特許を侵害しているのを確信した上で売り続けたという判断が下ればこの3倍の賠償金になる。)またEchoStarはおそらく控訴するので、これが確定するのはまだ先のことになるだろう。今回TiVo勝訴の評決を下したEast Texasの裁判所は、過去特許係争において特許保持者側に有利な判決を時間をかけずにスピーディーに下してきたことで評判がある。(ちなみに裁判官はTiVo所有者だったそうだ。)今後もこう簡単に行くとは限らない。

株式市場が期待しているのはおそらく今後Comcast以外のケーブル会社からライセンス契約を獲得することができるのではないかという点だろう。

もし今回の判決が確定し、EchoStarが控訴しなければ他のケーブル会社やDVRのメーカーに与えるプレッシャーは大きなものとなる。だがこの判決が確定する前に他社がライセンスを急ぐことは考えにくい。DirecTVのライセンス延長も、今後3年間TiVoへのライセンス料が増えることを保証したわけではない。おそらくはNDSベースのDVRの問題が解決するまでの一時しのぎである。また今回の契約延長にはTiVoとDirecTVの間で特許係争をしないというが盛り込まれている。これでDirecTVにとってはEchoStar裁判の判決がどちらに転んでも自分には被害が及ばないということになる。

Comcastでの展開は今年の終わりから始まることになっているが、これもどの程度の規模になるのかはまだわからない。数年前にComcastMicrosoftから出資を受けた見返りとしてMicrosoft TV FoundationベースのDVRを展開する契約があったが、これも結局はMicrosoftのお膝元であるSeattleのマーケットで展開されたのみで、その後広がっている気配はない。また、Comcastの広い範囲でオファーがされたとしても、これまでTiVoを使ったことのないDVRユーザーが、どの程度TiVoに切り換えようとするかも未知数である。

ということで、個人的にはここ数ヶ月の急激な上昇はちょっと行き過ぎていると思っている。とりあえずは4半期ごとの決算でキャッシュフローポジティブな経営が続けられるのかどうかに注目してみたい。