ネットビデオの成功例とプレースシフト - CBSの業績発表から

4月12日のエントリーでも触れたが、最近のネット上の商業ビデオの成功例として挙げられるのが、CBSがやったNCAAトーナメントのストリーミング放送。これに関してCBSが業績発表のカンファレンスコールで具体的な数字を挙げていた。

CBS Corporation Q1 2006 Earnings Conference Call Transcript (CBS)
http://mediastockblog.com/article/9611

これによると、トーナメントを通してのストリーミング数が1900万。これだけのストリーミングにもかかわらず、メインのテレビの視聴率は全く影響を受けなかったので、このストリーミングによる約400万ドルの収入は純増。来年以降はさらに増えることが期待されるという。

このストリーミングがメインのテレビの視聴率に影響を与えなかったというのは、そのほとんどが本来ならテレビの前にいて見ることができなかった人たちが、別の場所で見ることができるようになったということで、これはいわばプレースシフトのサービスだったと言うことができる。400万ドルというのはまだそれほど大きな数字ではないかもしれないが、視聴者に対してコンテンツを配信する側がプレースシフトのサービスを提供して収入を上げたということの意味は大きい。

プレースシフトといえば最近よく話題になるのがSlingbox。先週ラスベガスで開催されていたNABでも話題になっていたようで、興味深いのが以下の記事。

HBO Exec: Sling Slags Copyrights
http://www.lightreading.com/document.asp?doc_id=93320&WT.svl=news1_4

HBOがSling Mediaを提訴するのではないかという憶測がされているが、コンテンツオーナー側がSlingboxに目くじらを立てるのは、このCBSの例に見られる通り、これが商売になりえるからである。

1月2日のエントリーで取り上げた梅田望夫さんのブログ記事
「カリフォルニアの「北」(シリコンバレー)と「南」(ハリウッド)」
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20051225/p2
の対立の構図がここでも顕著にあらわれているわけだ。

TiVoというシリコンバレーの技術がもたらしたDVRによるタイムシフトの大きな潮流に対しては、ハリウッドはほとんどなす術がなかった。ここで議論されるのは、DVRによるCMスキップというハリウッド側としてはネガティブな話ばかりである。

Slingboxというこれまたシリコンバレーの会社が仕掛けつつあるプレースシフトの技術を巡る戦いは、まだ始まったばかり。この話題は今後ともウォッチしていこうと思う。