ディズニーのブロードバンド戦略

現在ラスベガスで開催されているCESに来ているが、ここに来ていろいろなものを見たり聞いたりしながら考えている。

ソニーのCEO ハワードストリンガーのキーノートスピーチの中で、コンテンツは消費者によってPullされるようになったという話があった。別のあるセッションでも、消費者がコンテンツをコントロールするという話になった。消費者がコンテンツを選び、それを消費する場所、時間、デバイスまでをも自分で選ぶ時代。

この新しい時代のビジネスを考えたときに、本当に力を持つのは誰なのか?消費者がより多くをコントロールするようになることはまちがいないが、ビジネス上の力関係はまた別の話だと思う。

おとといのロイターの記事で面白いのがあった。

Disney looks to ESPN playbook for broadband strategy

http://news.com.com/Disney+looks+to+ESPN+playbook+for+broadband+strategy/2100-1025_3-6016661.html?tag=fd_nbs_ent&tag=nl.e703

12月25日のエントリーでも書いたが、ESPNといえばスポーツファンなら必ずお世話になる巨大スポーツメディア。現在はケーブルテレビ、衛星放送のパッケージに組み込まれるチャンネルとして大成功しているが、この成功をブロードバンドの世界でも実現しようという戦略の話。

記事にもあるとおり、これまでインターネット上のメディアはそのほとんどが、コンテンツは無料で提供し広告で採算を取るビジネスモデルだった。既存のメディアがインターネット上に展開されるときにはあたりまえのことだった。新聞や雑誌は、そのほとんどが紙ベースではお金を払わなければならないが、インターネットになると無料だ。

CNNも一度は有料化したオンラインのビデオを最近無料にし、広告を付けるビジネスモデルに転換した。

この流れに全く逆らおうとしているのがディズニーである。
ディズニーがこうした強気の戦略を取ることができるのは、そのコンテンツの質が、他者が取って代わることができないものだからである。ディズニーのキャラクターはその徹底したブランディングによって守られている。ESPNのスポーツカバレッジにしても、コンテンツそのもの、あるいは編集やコメンテーターの質においても、他のスポーツ専門局は及ばない。

こうしてみると、ネットワーク局のABCは別として、ディズニーは他のスタジオに比べて非常に強いコンテンツを持っていると言っていいのではないだろうか。ディズニーの新しいCEO、Robert Igerはテクノロジーにも明るく、これまでのハリウッドの常識にとらわれない新しい時代のコンテンツビジネスのありかたをより積極的に模索しているように見える。

ディズニー株は昨年春の高値$30から、現在は$24ちょっとまで20%ほど下げている。彼らの持つコンテンツの質を考えると、もう少し評価されてもいい気がする。