Google Video StoreとAkimbo
CESでいろいろな発表があり、いろいろな製品が展示されていたが、今回はその中でもこのブログのテーマの一つであるビデオのロングテールビジネスに関わる話を取り上げて考えてみることにする。
インターネットでビデオというのは、今年がブレイクイヤーになるのではないかというような論調があちこちに見られる。昨年からiPodのビデオ配信参入でにわかに活気を帯びてきたところに、今回のCESでのGoogleのアナウンス。1月3日に書いたStarzのダウンロードサービスなどもあり、続々と新しいサービスが立ち上がりつつあるのは間違いない。
その中でも、明らかにビデオのロングテールビジネスを模索しているのがGoogle、そしてAkimboである。
AkimboはCESでセットトップベンダーのThomson、そして映画のダウンロードサービスのMovielinkとの提携を発表した。
http://www.akimbo.com/press_rel_010406-2.html
Akimbo(www.akimbo.com)というのはインターネットを使ったオンデマンドのビデオダウンロードサービスの一つで、2004年2月にスタートした。これはAkimbo専用のセットトップボックス、あるいはMCEを搭載したパソコンを通してビデオのダウンロード視聴ができるサービスで、現在8,000タイトルほどあるコンテンツのうち、月額$10で約半分ほどのタイトルの視聴が可能。残りはプレミアムコンテンツで、ア・ラ・カルテでその都度値段を払う。
Akimboは加入者数を公表していないが、おそらく相当に少ないのではないか。
AkimboのCEO Josh Goldmanがビジネスモデルの話をするのを何回か聞いたことがあるが、彼はよくAkimboはビデオの世界でロングテールビジネスを実現するのだと言っている。Akimboの場合テールのコンテンツは割と充実していると言ってもいいのかもしれない。トルコのコメディ番組とか、中国の映画とか一部の人には需要があるであろうコンテンツが多くある。しかしAkimboに決定的に欠落しているのがメインストリームのコンテンツである。
もちろんAkimbo自身もこの問題はわかっていて、以前からケーブル、衛星放送業者の提供するセットトップボックスの中にサービスを組み込んでもらえるよう交渉を続けていると言っていたが、いまだにアナウンスには至っていない。今回のMovielinkとの提携もあまりインパクトのある話ではない。
さて、一方のGoogle Video Store。
アナウンスされたプレミアムコンテンツの目玉はNBAとCBSの番組。しかしこれだけでメインストリームのコンテンツとして充実しているとは言えない。コンテンツの観点からは、結局Google Video StoreもAkimbo同様テールのコンテンツばかりになって、Netflixのようなメインストリームからテールのコンテンツまでカバーするサービスには成り得ない可能性がある。
しかしAkimboとGoogle Video Storeは根本的にビジネスモデルが違うのではないか。
AkimboはSubscriptionベースのビジネスモデルである。加入者は毎月$10払うだけでなく、セットトップボックスあるいはMCEのパソコンまで購入する必要があるのに対し、Google Video StoreはSubscription不要のア・ラ・カルテベース。
Akimboは単独では生き残れないと思う。ニッチなコンテンツだけに毎月$10づつ払い続ける人が果たしてどれくらいいるのか。ケーブルなどの有料サービスの一部に組み込まれるような形にならないと加入者を増やすことは出来ないだろう。
だが、Google Video Storeの方はどちらかというとeBayのようなものになるのではないだろうか。これまでケーブルなどでほとんど見られることのなかったチャンネルなどが、Googleの検索によってより多くの人に発見されるようになるのであれば手持ちのコンテンツを切り売りすることもできるだろう。ローカルのテレビ局にはしょっちゅう視聴者から放送したビデオの録画を売って欲しいという話が来るのだと言う。ローカル局で紹介された会社や人たちからのリクエストらしい。
アマチュアビデオの販売も、それほど一つのビデオを多くの人が買うようにはならないかもしれないが、Googleは全てのビデオ販売から30%のコミッションを得るのだから、塵も積もれば山になるのかもしれない。
このモデルであれば、メインストリームのコンテンツはなくてもきっと成り立つ。NBAやCBSのコンテンツなんてそもそもいらなかったのではないだろうか?