ディズニーのピクサー買収の可能性を深読みする

zakm2006-01-19

今日付けのWall Street Journalのトップ記事は、ディズニーによるピクサー買収の可能性の話だった。
まだ決着はついていないのだが、このディールの行方をちょっと考えてみることにする。

まずは簡単にこれまでの経緯を整理してみる。

ピクサーはもともとアップルのスティーブ・ジョブズルーカスフィルムのCG部門を買ったもの。ピクサーの作品をディズニーが配給する契約が2006年に切れることになっていたのだが、ディズニーの前CEOのマイケル・アイズナーとスティーブ・ジョブズの間で契約更新の話がこじれ、2004年の初頭にスティーブ・ジョブズがディズニーとの交渉を打ち切ることを宣言。ディズニーはその後マイケル・アイズナーを更迭し、後任にCOOだったボブ・アイガーを任命。最近になって交渉が再開された。

現在の契約はかなりディズニーに有利なものになっていたのだが、これまで公開した全作品が大成功したことでピクサー側はより有利な条件を引き出そうとしている。"Toy Story"、"Monsters Inc."、"Finding Nemo"、"The Incredibles"などこれまでリリースした6本の映画の平均興行収入はなんと$243 million。劇場公開のアニメではすっかり落ちぶれてしまったディズニー初のCG映画で、久々のヒットとなった"Chicken Little"でさえも先週時点でやっと$133 millionにしかならない。

ハリウッド歴代の興行収入トップ40を見ても、ピクサーの作品が四本も入っているのに対し、ディズニーのアニメは"The Lion King"一本のみ。

ディズニーにとってピクサーは貴重な収入源だったのだ。

一方のピクサーにとっては、ディズニーから欲しいのはその配給網とマーケティングパワーのみ。配給網だけなら他のスタジオでもいいわけで、立場としては圧倒的にピクサーが有利である。

そこに今回の買収の可能性の話。

ジョブズ氏自身が私財を投じて育ててきたピクサーを売るのかどうかは、おそらく値段の問題ではないだろう。お金以上にジョブズ氏が狙う何かがなければ、自分の子供を売るようなことはことはしないはずだ。

記事によると、買収によってピクサー株を50%超持つジョブズ氏がディズニーの筆頭個人株主になることになり、ディズニーの役員の椅子を与えられる可能性があるという。

ではディズニーの役員になることでジョブズ氏が狙うのは何なのか?

あるとすればアップルとの提携だろう。iTunesで現在ディズニー傘下のABCのテレビ番組をiPod向けに販売しているが、将来的にはリビングのテレビにもコンテンツを配信することを考えていてもおかしくはない。現在リビングへのコンテンツ配信において圧倒的な力を持つのがケーブル会社。ジョブズ氏は過去にケーブル業界の独占的なビジネス形態に批判的なコメントをしていた。噂をされながらもいまだにリビング向けの商品をアップルが出していないのは、ここがアップルがビジネスをコントロールできるところではないと考えているからだろう。

もしジョブズ氏が、ケーブルという中間業者を介さないブロードバンドの将来に、リビングへのビデオ配信ビジネスの可能性を見出しているとすれば、真っ先に必要になるのが強力なコンテンツであり、ディズニーはこの点において筆頭に来るべきパートナーとなりえる。

ピクサーの買収成立→アップルのリビング進出、と考えるのは早計だろうか?