ケーブル株の憂鬱 - Comcastの業績発表から

Time Warnerに続き、Comcastが業績発表を行った。Time Warnerが好調で株価を上げたのに対し、Comcastは株価を下げた。業績が予想を下回ったのに加え、電話サービスのキャッシュフローの悪さも響いた。

Comcastはこれまでは交換器による電話サービスを展開していたが、昨年からやっと積極的にIPへの転換を始めた。昨年の業績を見ると、電話サービス全体としては2%の減収。電話サービスの加入者そのものは増加したものの、単価の高かった交換器のサービスから、単価の安いIPへの乗り換えによる影響によるもの。

マーケットは当初のキャッシュフローの悪さにネガティブに反応したが、中期的に見ればリターンの見込める投資だろう。IP電話サービスをオファーすることで、付随するブロードバンドのバンドルも有効に展開できる。

Comcastは2006年には100万世帯の純加入者増を見込んでおり、Time Warner Cable同様電話サービスがケーブルの成長の原動力になりつつある。

一方でComcast株はじめ、ケーブル各社の株価は近年低迷している。90年代半ばから業界全体で$90 billion規模の設備投資をしてきたことで借金が多いことも災いしている面もあるが、それよりも近年の株価の伸び悩みは競合に対する不安要因からであると思われる。

ケーブルは基本的には全米の各地区(システム)レベルではほぼ独占業態であるので、ここでいう競合というのは衛星放送と電話会社ということになる。特に最近になって電話会社が本格的にIPTVサービス展開を始めたことで、ビデオサービスにおける電話会社の脅威が重石となっている。

市場からの評価の低さに嫌気がさした会社の中には、Coxのように株式公開をやめてプライベート化の道を選んだところもある。Cablevisionもプライベート化を模索したが取りやめた。

さて、今回のComcastの業績発表。COOのSteve Burkeが通常は全ての事業領域のアップデートをするところを、今回のカンファレンスコールではデジタルの電話サービスのみにフォーカスして時間を割いていた。このパートの中で、トリプルプレイ(ビデオ・ブロードバンド・電話サービスのバンドル)において、電話会社と比べてComcastが有利な立場にあるということを、具体的な数字まで挙げて強調している。以下SeekingAlphaのスクリプトからの引用。

http://mediastockblog.com/article/6476


The really important thing for us is, I think we are years ahead of where our competitors are and will be. Right now we can offer three products to 25 million homes, if you include our old circuit switch phone business, and we can do that immediately and are doing that. If you look at the Bells combined, we think they can only offer an integrated three-product bundle over their platform to about 1% of just our number, about 250,000 homes. We also think they face a number of very significant hurdles to get to where we are, and what they are doing today frankly is just not a scalable or financially feasible solution. So we think we have a real head start. We’re ready for prime time, and we’re going to be very aggressive in 2006 and beyond.

明らかに、市場が電話会社の脅威へ過剰反応を見せていることに対する牽制だろう。

旧SBC(AT&T)、VerizonのIPTVサービス展開を発表している2社のうち、Verizonが現在のところ先行してはいるが、この理由はRF over IP、すなわちQAMによるビデオ伝送を光ファイバー上で行うという、敢えて古い技術を使っているからである。こうしなければいけなかったのは、既存の技術を使うことで早いタイミングで安定したサービスを提供したかったからで、一刻も早く顧客離れを食い止める必要があったのである。

IPTVに関しては世界的な流れでもあり、今後成長する分野であることには疑いの余地はないが、こと北米マーケットに限ってみると、攻めているのは実はケーブルの方なのである。