MovieBeamは生き返るか?
ディズニーがMovieBeamをスピンオフするというニュースがあった。
http://www.dailynews.com/business/ci_3485160
MovieBeamというのは、ディズニーが2003年に始めたベンチャーで、地上波テレビの電波を使ってセットトップボックスに映画のデータを送信し、ハードディスクに溜められた100あまりのタイトルの中から消費者が選んで見ることができるというもの。数都市でトライアルが行われたが、昨年4月にサービスを停止していた。
ケーブル、衛星放送、あるいはビデオレンタル業者といった中間業者をスキップして、直接消費者にコンテンツを届ける試みの一つであったが、あまりにもビジネスモデルの欠陥が多かった。
まずは値段。STBのレンタルに月額$7。これに加えて映画を見るたびに$2.50から$4別途課金される。月に映画一本見るだけで、既に$10かかってしまう。さらに選べるタイトルがわずかに100タイトルで、毎週更新されるのがそのうちのわずかに10タイトル程度というのは、あまりにもセレクションが少なすぎた。
さらに、見られるタイトルも多くがPay-per-view、VODのウインドウの作品で、DVDのウインドウの作品はほとんどなかったということで、ビデオレンタルのサービスと比べても明らかに見劣りのするものだった。サービス停止に至ったのもまったく不思議ではない。
そこに今回このサービスをスピンオフし、新たにIntel、Ciscoなどから$48.5 millionの出資を受けたとのニュース。これには正直驚いた。明らかにうまくいかないことがわかって、すっかり諦めたものと思っていたのだが。
まず不思議なのが、なぜこの地上波を使ってデータ送信をするという技術に投資がされるのか?
ケーブル、衛星を使わないでリビングのデバイスにデータを送信する方法としては一理ある。現在リビングルームにインターネットが入っている家庭は少なく、これがリビングをターゲットとするデバイスが超えなくてはならないハードルの一つではある。しかしインターネットが双方向であるのに比べて地上波の電波では単方向の通信しか出来ない。つまりユーザーがオンデマンドでデータをダウンロードすることができないわけで、衛星放送がケーブルに比べて不利であるのと同じだ。
さらに不思議なのが、なぜCiscoが出資を決めたのか?
Ciscoはご存知の通り、インターネットのルーター販売を主なビジネスにしている。電波を使ったデータ送信ではCiscoにはうまみはない。Ciscoは最近ネットワークDVDプレーヤーなどを作っているKiSSを買収したりしてCE業界への進出を模索しているが、その一環としての使えるサービスの一つとしての出資と見るべきなのか。
Intelが出資した背景には、最近彼らが力を入れているViivへの取り込みを考えているというのがあるだろう。しかしパソコンをリビングに置くためのハードルはあまりにも高い。いくらMovieBeamの様なサービスを取り込んだところで、ケーブルや衛星放送が初期費用タダで配っているDVRに対して、どうやって消費者に$1,000以上もする高価なパソコンを買わせることができるのか?
Cisco、Intelといった名高い一流企業に加えて、いくつかのベンチャーキャピタルの頭脳が何かの理由で「儲かるかもしれない」と考えたから出資が実現したハズなので、きっと何か秘密兵器があるのではないかと思いたい。しかし、もし今回のスピンオフによる新しいサービスが、前回の専用STBからIntelのViiv、あるいはCiscoのCEネットワーク商品へのサービスの取り込みだけなのだとしたら、また失敗に終わるのは今から目に見えている。
新しいサービスがアナウンスされたらまたフォローすることとしよう。