本命のVideo iPodが登場?

最近噂が出回っているVideo iPodの新バージョンの話。
3.5インチワイドのタッチスクリーン上にクリックホイールが表示されるインターフェースになっているが、Wi-FiBluetoothはなく、テレビに接続できるようになっている、、等々。
噂にしてはやけに詳細が語られているこの話、本当かどうかは別として、実際に商品としてヒットする可能性があるのかを考えてみたい。

まず1月11日に書いた話の中で欠落していた情報が、ビデオダウンロードに占めるミュージックビデオ以外のビデオの割合と、iPod(ビデオをサポートするモデル - 以下便宜的にVideo iPodと呼ぶ)の販売数だった。その後のディズニーのカンファレンスコールの中で、ABCの番組のダウンロードが150万という情報。一方のVideo iPodの販売数の方は、正確かどうかはわからないが、Think Secretの情報によるとどうやら昨年12月の四半期で390万台だったという。(ちなみにiPod Nanoの方は800万台)

iTunesのテレビ番組ダウンロードのランキングを見ると、「Lost」などABCの番組がかなり上位を占めているので、仮にABCのコンテンツをiTunes内のテレビ番組全体の50%のシェアと仮定すると、テレビ番組のダウンロードが約300万。販売台数が390万台であったことを考えると、3ヶ月間で1台あたりのテレビ番組のダウンロードは1本にも満たなかったことになる。

ミュージックビデオその他全てを含めた形でも、1台当たり2本強といったレベル。

まあここでやった計算はいろいろ不確定な情報と推測を元にしているので、実際のところはもっと多いのかもしれないが、ビデオ配信のプラットフォームとしては、まだ成功と言える段階には来ていないと思う。

ではなぜVideo iPodは390万台も売れたのか?これはWall Street Journalのコラムニストであるウォルト・モスバーグ氏が彼のコラムで的確に言い当てている。


This new iPod will very quickly become the bestselling handheld video device, mostly because people will buy it mainly for its music capabilities.
http://ptech.wsj.com/archive/report-200601.html

ソニーPSPはゲーム機として買われるが、UMDで映画を見るために買う人は少ないのと同じことだ。

それならば、この新しいVideo iPodも同様に売れるか、というとここはやや疑問が残る。

理由の一つ目は値段。3.5インチの大画面とタッチスクリーン採用となると、現行のVideo iPodよりは高いものになってしまうだろう。NanoやShuffleが値下がりしていく中で、音楽専用モデルとの値段の差があまりにも開きすぎてしまう可能性がある。$100程度の値段の差ならステップアップとして買われるかもしれないが、それ以上の値段になったときに果たして消費者がビデオのフィーチャーにそこまでのプレミアムを払うのかどうか?

二つ目はタッチスクリーン上に表示されるクリックホイールというインターフェース。見た目にはかっこいいかもしれないが、音楽プレーヤーとして使う時にはブラインド操作が出来なくなってしまうので、使い勝手が悪くなる。音楽プレーヤーとして使うことをメインに考えるユーザーにとって、音楽専用プレーヤーよりも使い勝手が悪い物にプレミアムを払わなくてはいけないというのはいただけない。

Video iPod発売以前のスティーブ・ジョブズは、もともとポータブルビデオに関してはネガティブなコメントが多かった。本格的なポータブルビデオデバイスをやる前に、ハイエンドのiPod用のフィーチャーの一つという位置づけで実験をしてみよう、というのが現行のVideo iPodだったのではないだろうか?

アップルがここまでの実験を経て成功を確信したのだとしたら、この噂は本当なのかもしれないが、噂のスペックのままでは個人的には?である。
この話も引き続きウォッチしていこうと思う。