ViivとLive!は失敗する

最近インテルがやけに力を入れているViiv(日本ではヴィーブというらしいが、英語の発音はヴァイブ)と、それに対抗してAMDが始めたLive!。パソコンにCPUを供給している2社が、リビングルーム向けのエンターテインメントPCのプラットフォームとしてプロモートしているものだが、San Jose Mercury Newsのコラムニスト Mike Langbergが面白い記事を書いている。

Cut through the jive on Viiv and AMD Live
http://www.mercurynews.com/mld/mercurynews/news/columnists/13972289.htm

要は、インテルとAMDがエンターテインメントPCをプロモートしたいのは分かるが、じゃあ実際にViivとLive!でどんないいことがあるの?と聞かれたときに簡潔に答えることができなければ混乱を招くだけだろう、というもの。

まさにその通りだと思う。

インテルCentrinoのプロモーションで成功した前例があったので、今回も同じようなノリでうまくできると踏んでいるのかもしれないが、インテルにはそれ以前の問題が見えていないのではないかという気がする。

Centrinoは非常に分かりやすかっただけでなく、それがもたらすベネフィットが理にかなっていた。外出先でもワイヤレスでインターネットにアクセスできる、これはノートパソコンを持ち歩くビジネスマンなら誰でも望むところで、ノートパソコンに機能が統合されることに商品としての必然性と、使い勝手の向上、さらには別売りのワイヤレスカードを買うよりも安いというコストベネフィットさえもあった。数百億円のプロモーションの予算を割くだけの価値があったのである。

果たしてViivはどうか?

はっきり言ってしまえば、商品としての必然性も、使い勝手の向上も、コストベネフィットもほとんどない。

ビングルームPCというマーケットがあること自体は否定しない。アメリカではしばらく前からHTPC(Home Theater PC)と呼ばれる自作のリビングルームPCを組み立てる人たちのコミュニティーが出来ていたし、コンテンツのデジタル化によってPCであらゆるコンテンツを扱うことができるようになったのも確かだ。

しかし商品としての必然性があるかというと、私にはあるようには思えない。インターネット経由でビデオがダウンロードできるようになったのは確かだが、そもそも事務機器であるパソコンにそれをやらせる必然性がないのだ。グリコのおまけと言ったら言い過ぎだろうか。

事務処理やネットを使ったコミュニケーションを本職とするパソコンが、映像処理を本職とするセットトップボックスに簡単に勝てるわけがない。そもそもリビングで事務処理やメールなんかをやるわけではないのだから、そのために設計されたパソコンというアーキテクチャそのものが冗長なのである。しかもリビングルーム向けのPCとなると、そこからさらにチューナーやハイエンドのグラフィックスカードを載せたりすることになるので、さらに高価なものとなってしまう。

セットトップボックスにはできない、リビング向けのパソコンにしかできない何かがあって、しかもその何かが相応の値段で提供された時に、はじめてマスマーケットにアピールする商品となる。この前提がないまま、数百億円と言う明らかにマスをターゲットとしたキャンペーンを張ったところで、外すのは今から目に見えている。

AMDはおそらく競合上追従せざるをえなかったのだろう。ただ、さすがに彼らはインテルほど懐に余裕がないので、まだダメージは少なくて済むのかもしれないが。