AT&Tがベルサウスを買収

既にいろいろ報道されているのでご存知の方も多いだろうが、AT&Tがベルサウスを買収すると発表した。
数年前から噂されていた動きではあったが、SBCによる旧AT&Tの買収が完了した直後ということもあってタイミング的には驚かされた。

AT&Tは元はといえば、全米をカバーする巨大な電話会社であったが、これが1984年に7つの地域電話会社、いわゆるBaby Bellに分割された。結局この分割から20年余りを経て、残るのはAT&T、Verizon、Qwestの3社となったわけだ。マーケットキャップで見ると、AT&TとBellSouthが合わせて約$167billion、Verizonが約$98billion、そしてQwestが約$12billionということで、規模から言えばほぼ2大会社に集約されたということになる。

この電話会社の分割、合弁、買収の動きだけを見ていると、昔のAT&Tに逆戻りしているように見えるが、外部環境が当時とは全く変わっている。ケーブル会社が電話に力を入れ始めている話は過去のエントリーでも取り上げたが、電話、インターネット、テレビ、それに携帯電話まで含めた競争環境を考えると、今回の買収の話は理にかなっている。

メインの競合となるケーブル業界の方はどうか?
最近の動きではComcastTime Warner CableによるAdelphiaの買収くらいしかないのだが、もう少し遡ってみると、2001年のComcastによるAT&T Broadbandの買収というのがある。

当時のAT&Tマイケルアームストロングには、大きなビジョンがあった。MediaOne、TCIといったケーブル会社の買収を積極的に進め、インフラのデジタル化によってテレビ、インターネット、電話のサービスを提供することだった。しかし、買収とインフラ投資によるキャッシュフローの悪化と、それに伴う株価の下落により、ケーブル部門をComcastに売却するという結果になった。

そのComcastの方は、やっとAT&Tから引き継いだ交換機ベースの電話サービスから、IP電話へのシフトを積極的に進めている段階だが、当時アームストロングが描いたビジョンを着実に実現しつつあり、これに対抗しようと現在のAT&Tが慌てているというのも、なんとも皮肉な話である。