TiVoの業績発表から

今日NASDAQが概ね下げた中で、TiVo株は4.7%上げた。これはきのうの業績発表を好感したもの。
きのうの業績発表のカンファレンスコールを聞いてみたなかで、いくつか興味深かった点を挙げて考えてみる。

まずは業績の数字から。
細かい数字はここでは挙げないが、注目すべきは創業以来初めてFY通年でのキャッシュフローがポジティブに転じたことだろう。FY2005のキャッシュフローがマイナス$37.2millionであったのに対し、FY2006がプラスの$3.4million。ボトムでは引き続き赤字が続いてはいるものの、キャッシュフローポジティブは評価されるべきだろう。

新しいプライシングプランも発表した。
当初はTiVoの直接販売のみのオファーだが、初期費用ゼロで、1年から3年契約で月額$19.95から$16.95で選べるシステム。以前MovieBeamに関するエントリーで初期費用の問題について書いたが、TiVoの今回のオファーは少なくともこの問題を解決した。とはいえ、初期費用がかからないのはケーブルも衛星放送も同じなわけで、さらに月額料金も彼らの方が安い。これがTiVo起死回生のヒットとなるかどうかは甚だ疑問だ。

ハードウェアの販売が益々厳しくなる状況の中で、TiVoが生き残れるかどうかでアナリストが注目しているポイントの一つが、Comcast以外のオペレーターとのライセンス契約の進捗。これについては他のオペレーターとも交渉中と言及するに留まり、具体的なアナウンスは何もなかった。

さて、ここでちょっと思い出したのが3月2日にTiVoが開催したプレスイベントで発表した、新しいフィーチャーである「TiVo KidZone」。
http://www.tivo.com/1.2.17.asp
これは親が子供に見せたくない番組をブロックする機能だったのだが、「プレスイベントまで開催しておいて中身はこれだけ?」と酷評を浴びた。もともと新しいライセンスパートナーがアナウンスされるのかとか期待されていただけに失望も大きかったのだが、よくよく考えてみればTiVoだってそれほどインパクトのあるアナウンスではないことは最初からわかっていたはず。それでも敢えてプレスイベントまで開催して大々的に発表した意図は何だったのか?

ふと頭に浮かんだのは、このアナウンスが実はケーブルなどのオペレーターを意識したものなのではなかったのかということ。

2月9日のエントリーでケーブル業界とFCCの間のア・ラ・カルテを巡る戦いの話を書いた。FCC委員長のケビン・マーティンはじめ、今のところ共和党系保守勢力の声が強く、ケーブル側のFamily Tierのオファーでも「まだ足りない」と言われている。アメリカでは親が子供に有害な番組を見せないようにするというのは大きなトピックの一つで、今回の「TiVo KidZone」のような機能は保守系には歓迎されるものである。

TiVoからオペレーターに向けたメッセージというのは、実はこのKidZoneのフィーチャーが、FCCのア・ラ・カルテ化の要求に対抗するカードとして使えますよ、ということだったのではないだろうか?だとすれば、難航していると思われるComcast以外のオペレーターとの交渉に一石を投じるためのイベントだったと見ることもできる。

もう一つ、今回の業績には関係ないが、今月末から始まるEchoStarを相手取った特許訴訟の行方に注目したい。TiVoが2001年に取得した特許をEchoStarが侵害しているとして訴えたものだが、この特許の説明は


invention allowing the user to store selected television broadcast programs while the user is simultaneously watching or reviewing another program

というもので、DVRの基本機能をかなり広範囲にカバーするものとなっている。

訴えを起こしたのは2004年なので、特許取得からしばらく待ったことになるが、これはキャッシュが潤沢ではないTiVoにとって訴訟費用の負担が重たかったことと、当時TiVoはDVRマーケットを育てるという観点から、特許で係争を起こすよりもこれをライセンスすることに注力したかったからだ。

ただし、EchoStar側もこの訴えを受けてTiVoを別の特許侵害で反訴している。こちらの方はまだ陪審員の選定も始まっていない模様。あまり訴訟が長引くようだと、和解という可能性もあるのであまり期待はできないかもしれないが、この件も何か動きがあればまた書こうと思っている。