DVDに焼くこともできるダウンロードサービス

映画のダウンロードサービスはこれまでいくつかあったが、どれもHDDに保存はできてもDVDに焼くことはできていなかった。これがDVDにも焼くことができるようになったという話。

At last, movies to keep arrive on Net
http://news.com.com/At+last,+movies+to+keep+arrive+on+Net/2100-1026_3-6056829.html

聞こえはいいのだが、詳細をよく見てみるとこれはほとんど冗談のような話だ。

このサービスを始めるのは、アメリカにおける映画のダウンロードサービスを牽引してきたMovielinkとCinemaNow。これらのサービスはWindows Mediaを使っているのだが、焼けるDVDもWindows Mediaのまま。すなわち普通のDVDプレーヤーでは再生できないということ。

そもそもDVDに焼けることの最大の利点はポータビリティのはずだ。これまでダウンロードした映画がパソコンの画面でしか見れなかったものが、リビングのみならず、ポータブルDVDプレーヤー、車載のDVDプレーヤーでも見ることができるというところに意味がある。

この最大の利点が欠落しているにもかかわらず、値段はなんと$20から$30。これはリテールで売っているDVDタイトルの定価と同程度。通常リテールでは客寄せのためにマージンを削って安く売っているので、パッケージのDVDタイトルは発売日なら$15程度、旧作のディスカウントなら$10しないで買える場合も少なくない。しかもダウンロードタイトルにはボーナスフィーチャーもついていないということだから、消費者は高い値段を払ってパッケージよりも遥かに商品として魅力の劣るものを買うことになる。

なんでこんなことになっているかというと、記事内でもコメントされている通り、スタジオがWalMartなどのリテールに気を使って同じ卸値を付けているから。リテールでは他の商品を買ってもらってそこで儲けが出ればいいが、MovielinkやCinemaNowは他に売るものがないから、同じようにマージンを削ってディスカウントというわけにはいかない。しかしそんなことはスタジオにとっては関係ないことで、ダウンロードで買ってくれる人が増えれば、その分パッケージよりも流通その他のコストがセーブできるだけの話だ。

1月2日のエントリーで紹介したi2 Partnersによる分析で、ブロードバンド時代のビデオ流通の変化はハリウッド主導で進められるという話を紹介したが、この動きを見ている限りはその通りになっている。

ところで、上出のNew York Timesの記事の中で興味深かったのが以下引用。


Universal's research showed that the majority of those downloads were watched on computer screens, not video iPods

これまでのこのブログのトーンからも分かる通り、私はもともとポータブルビデオというコンセプトそのものに懐疑的なのだが、やっぱりそうだったのか、と思った次第。

一時期ははやるかと思われたPSP向けのUMDタイトルも最近はめっきり売れなくなってきているようだ。
Sony's Universal Media Disc facing last rites
http://news.yahoo.com/s/nm/20060330/film_nm/universalmediadisc_dc_1