未だに寛大なCostcoの返品ポリシー

昨年の12月17日のエントリー(返品天国アメリカにも変化の兆し)で、アメリカの小売店の返品ポリシーが、だんだん厳しくなってきているという話を書いたのだが、CNETでこんな記事を見つけた。

Is Costco's HDTV return policy ripe for abuse?
http://reviews.cnet.com/4520-6449_7-6548193-1.html

最近のHDTVの技術進化は速く、それに伴って値下がりのペースも速い。買った1年後には数十パーセント値下がりしてるか、あるいは同じ値段で1ランクかもっと上のサイズが買えたりする。この傾向はパソコン業界ではあたりまえの話だったのだが、近年の家電のデジタル化に伴い、テレビをはじめ、家電商品でも同様の傾向が見られる商品群が多くなってきた。

そんな中で未だに旧来の寛大な返品ポリシーを変えていないのがCostcoである。さすがにパソコンに関してはメーカーからの反発もあって、2002年に返品可能期限を6ヶ月にしたのだが、その他の商品については、100%満足しなかったという理由でいつまででも返品できることになっている。このポリシーを悪用してしまえば、一度Costcoでテレビを買って、それを毎年返品しながら同じ値段でもっと大きいサイズのいいテレビに買い換えるといったことができてしまう。

Costcoの店員のメッセージボードにはこんな書き込みがある。
Return policy at Costco....Abused
http://www.retailworker.com/node/10419

月曜日におむつの箱を買っていって、金曜日には1枚しか残っていないのに返品しにくる客。スーパーボウルの前日の土曜日に大画面テレビを買って行って、翌月曜日に返品しにくる客。。

こちらは実際にこのポリシーを活用している人の経験談
http://jaffo.blogspot.com/2005/08/costco-is-freakin-sweet.html

この人の例では5年前に買った$50のMail-in-rebate(割戻し)付きのコンピューターモニターを返品したところ、買値そのまま返金された(つまり割戻し分の$50は儲かった)という話もある。

2005年度のCostcoの総売上は約$57billion。このうちパソコン含むCE機器の売り上げは$3billion程度と、総売上比で言えば全体の5%くらいにしかならないが、2004年から2005年のCE機器売り上げの成長率は+29.3%(TWICE調べ)と、トップ10CEリテーラーの中では一番の成長率である。

利益率を見てみると、他のマスマーチャント系のリテーラーの利益率がWalMartが5.93%、Targetが8.21%に対してCostcoは2.79%。CE専門のBest Buyの5.51%と比べてもはるかに見劣りがする。

このままCostcoが返品ポリシーを変えずにいれば、CE機器の売り上げはさらに伸びるのかもしれないが、同時に利益率をさらに落とすリスクも負っている。もちろん返品のコストはCostcoだけが負担しているわけではなく、メーカーも一部を負担している場合もあるだろうが、これではメーカーにとってもCostcoは儲かりにくいアウトレットとなるわけで、これが続くようであればメーカーも黙ってはいないだろう。

一部の返品ポリシーを悪用する客を容認し続けるのは、結局まわりまわって他の客、Costcoの株主、Costcoへ商品を卸すメーカーにとっても不利益になるだけだ。もしCostco経営陣が、返品ポリシーの寛大さが他のリテーラーとの差別化になっていると考えているのだとしたら、これはとんでもない勘違いである。