USDTVが破産

USDTVが米国連邦破産法7条の適用を申請し、会社の清算に入った。
USDTV Files for Chapter 7
http://www.broadcastingcable.com/article/CA6351629.html

USDTVというのは、ケーブルや衛星放送に対抗して、チャンネル数は限られるが安価なペイTVのサービスを提供していた会社。2004年以来4つのマーケットでサービスを展開。ローカルの放送局から地上波デジタルのスペクトラムを一部借り上げ、ここにESPN、Fox Newsなどの人気のケーブルチャンネルをのせて月額$20でオファーしていた。

2004年当初は3年間で500万加入世帯を目指すとしていたのだが、現在までの加入世帯はわずか1万6千世帯にとどまり、破産することとなってしまった。

個人的にはとても残念。現在私はComcastのDigital+HD+DVRに加入しているのだが、これが毎月$70以上。なのに実際に見ているチャンネルはネットワーク系を除けば5チャンネルくらいしかない。ESPN、HGTV、Disney Channelなどだが、これら人気のケーブルチャンネルはUSDTVでカバーされていたから、仮にここシリコンバレーでサービスがオファーされていればきっと乗り換えていただろう。

USDTVが破綻した主な原因はおそらくマーケットを広げることができなかったことで、これはローカルの放送局側が乗り気でなかったことが原因のようだが、そもそもUSDTVはターゲットとする顧客層を間違っていたように思う。

1万6千世帯の現加入者のうち55%がケーブルにも衛星にも加入していなかった世帯であったという。セットトップボックスを売っていたのもWalMartで、明らかに低所得者層をターゲットにしていたわけだが、もともとアメリカの9割方の世帯が既になんらかのペイTVに加入しているという状況で、残りの1割ほどの世帯をメインのターゲットにしていたのではあまりにもマーケットが狭すぎる。USDTVがターゲットにすべきだったのは、低所得者層ではなく、逆に高所得者層なのではなかっただろうか?

高所得者層とは言っても、毎月$50-$100くらいケーブルや衛星放送に払っていながら、そのほとんどのチャンネルを見ていないのに高い金を払わされ続けていることに不満を持っている層は確実にある。USDTVのチャンネルラインアップは、ほとんどの人気ケーブルチャンネルをカバーしていた。HBOやShowtimeなどのプレミアム映画チャンネルはないが、Netflixに加入しているような家庭ではいらないはず。Netflixのメインストリームの顧客層の年収も7万5千ドルレベルの高所得者層に入る。この層をターゲットにHDのDVRを持って来てサービスをオファーしていれば、もう少し違う結果が出せたのではないだろうか。

地上波デジタルそのものも、あまり普及の兆しを見せていない。デジタル化により放送局には複数のチャンネルが割り当てられるようになったが、それらもケーブルから顧客を奪うことができるほどの魅力的なチャンネルにはなっていない。これに関してはFCCのマストキャリールールが、追加されたチャンネルまで含まれるようにルール改正されるかどうかがひとつのカギになるのだが、これについてはまた別の機会に書こうと思う。